英知、信義、力、容貌の美、そしてヴェーダの栄光――
これらすべて転輪聖王の位にふさわしかったが、じつに、王は世界を統べる転輪聖王よりもさらに偉大な存在だった。シュヴェータケートゥ・ダールブヤは、夜に王宮の上を過ぎた七羽の紅鶴の会話を聞いた。「近眼の兄弟たちよ」群の頭が言った。「近づきすぎるな、陛下の徳行の輝きに翼を焼き焦がされるぞ」またウシャスティ・シャーラーヴァトヤは群のなかの牡牛が雌牛にむかって話すのを聞いた。「アティダンヴァン・サナカについて言えば、まこと彼こそ荷車のライクヴァにも比すべき者だ」――「そのライクヴァとはどんな方でしたか」雌牛たちは言った。「そしてヴィデーハスの王はどんな方なのですか」――「さいころ遊びでは、クリタの目を出して勝った者が、ほかの者の点をすべて取る。そのように、いにしえの世の人間がおこなった善行はすべてライクヴァに寄せられ、いまの世の人間がおこなった善行はすべて王に寄せられる」プラスナーヤナ・ジャイヴァリは祭壇の炎が独語するのを聞いた。「アティダンヴァン・サナカは太陽の中に見える黄金の人を知る、黄金の髭と黄金の髪に青い蓮のような眼をした爪の先に至るまで金色の者を。まことアティダンヴァン・サナカは黄金の人、独一の鳥を知る……」
ウパニシャッドは云う、そしてこれを知る者、
たしかに王はブラフマンを知っていた。王はクシャトリヤ階級の戦士だったが、多くのバラモン階級の者も叡智を学ぶために王のもとを訪れた。彼らは王に問いを発し、王は彼らの問いに答えた。自我の自我について啓示を与え、独一の鳥の逍遙について教えた。息の息なるもの、眼の眼なるもの、耳の耳なるもの、心臓の中の小さき者について明らかにした。それから王が彼らに問うと、彼らは沈黙した。「師よ」誇り高いバラモンたちが請うた。「お教えください!」
この男はいかにも王者らしかった。つねに行動し、つねに王権の栄華と威風を纏って光り輝き、かつてなんぴとも彼の休息する姿を見たことはなかった。ヴェーダの賛歌の詠唱と荘重な儀式をもって祭官が犠牲を捧げるように、あるいはブラフマンを讃えつつ太陽が天を渡るように、そのようにアティダンヴァン・サナカは世事をつかさどった。「太陽と月の見るものすべて、光と闇の聞くことすべて、心の思うことすべて、あるいは手の行うこと、舌のささやくこと、すべて彼は知る、彼は知る!」ひとびとは言った。ひとりが彼を恐れるいっぽうで百万人が彼を愛し、彼の意志と仁慈の及ぼす力が絶大であったため、世界にあまねく正義が保たれ、邪悪は断固として抑えつけられた。
ところでそのころ、グランタ=ナガリの森に三人の行者が住んでいた。ヴァカ・カークシャセーニ、サトヤカーマ・カーペーヤ、そしてガウタマ・カウシータケーヤあるいは人呼んでパウトラーヤ・グラーヴァである。彼らは智慧を求めることたゆみなく、三百年を瞑想に費やした。すなわち苦行に励み、呼気と吸気を制し、声には出さずウドギータを繰り返した。さまざまな力を得たが、まこと、いまだ得るに至らぬものもあった。
百年が過ぎたとき、ヴァカ・カークシャセーニが口を開いた。
「サトヤカーマ・カーペーヤよ、御身はブラフマンを知りたもうや?」
「われは知らず」サトヤカーマ・カーペーヤは答えた。
また百年が過ぎ、サトヤカーマ・カーペーヤが口を開いた。
「ガウタマ・カウシータケーヤあるいは人呼んでパウトラーヤ・グラーヴァよ、御身はブラフマンを知りたもうや?」
「われは知らず」ガウタマ・カウシータケーヤは答えた。
そしてまた百年が過ぎ、ふたたびガウタマ・カウシータケーヤが口を開いた。
「世にかのヴィデーハスの王アティダンヴァン・サナカがいる。彼は知ると言われている。彼のもとへ行き、教えを請うべきと御身らは思し召さるや?」
「われらはバラモン、しかるに彼はクシャトリヤである」ほかのふたりは言った。「われらに教えるにあたいせぬ者を師と仰ぐなら、われらの頭は落ちるやもしれぬ」
「まさに、われらの頭は落ちるやもしれぬ」ガウタマ・カウシータケーヤは言った。
つづいてサトヤカーマ・カーペーヤが言った。「ヴァカ・カークシャセーニよ、御身の思し召しやいかに」
「われらのうちひとりが王の宮殿に行き、王の持てる知識と、いかにして知識を得るに至ったかを調べるのがよかろう」ヴァカ・カークシャセーニは答えた。そして彼とガウタマ・カウシータケーヤは言った。「サトヤカーマ・カーペーヤよ、御身が行きたまえ」
サトヤカーマ・カーペーヤは掃除夫に身をやつして都へ行き、朝になると民衆にまぎれ込んで、アティダンヴァン・サナカが裁きの場に姿を現すのを待った。王が玉座に上るさまを見れば、夜明けの黄金色と緋色、澄んだサフランの色と混じりけのない朱色の空に壮麗な太陽が昇るかのようだった。裁きが下されるのを聞けば、王の眼力の前には、いかなる嘘も吐きとおすことはかなわないのがわかった。なされた行為、考えられた考え、話された言葉はひとつ残らずアティダンヴァン・サナカの知るところであり、隠しだてはできないのだった。行者は明け方から正午までをその場で過ごし、賛嘆の思いをますます大きくした。王の手の動きは褒賞と懲罰をつかさどるカルマの動きのごとくに見え、王のまなざしは慈悲深くも地上のすみずみまで貫くかに思われた。正午になると、ひとびとは平伏して言った。「正義は行われた、微に入り細を穿つまで」サトヤカーマ・カーペーヤも繰り返した。「しかり、正義は行われた」しかし彼は見かけに惑わされる人間ではなかった。そこで日暮れまで、都の門から一里ほど離れた道端に瞑想しながら座りつづけ、見聞きしたものについて思いめぐらし、しまいには、もし智慧を学ぶためにヴィデーハスの王のもとに赴いたなら、自分たちの頭がもげ落ちはしないか、おおいに疑わしくなった。「なぜといって、森へ戻ってわが朋輩らの詮索を受けたなら、彼らはきっとこう言うだろう。『だがいまの話では、ブラフマンを知るかについてはなにもわからない』と。もっと調べてみる必要がある」
サトヤカーマ・カーペーヤは精神をひとつの問いに集中させ、その問いで空間を満たした。
頭上を三羽の烏が通りかかり、真ん中の一羽が行者を見下ろして呼びかけた。「詮索好きの兄弟よ、来い、汝に見せてやろう!」そこで行者は烏に姿を変えて空に舞い上がると、三羽とともに城壁を越えて都に入り、都の中心にある宮殿の囲いを越えて敷地の上を飛んだ。宮殿の敷地の中心にある庭園を越えて庭園の中心にある湖に出ると、眼下は見渡すかぎり水ばかりで岸辺の影も見えず、どちらの方向にもまたたく灯りひとつなかった。水面から岩が高く聳え、ヴァーユが行き来する高みを越えて伸びている。岩の上に建つ廃墟となった塔は、屋根は落ち、荒れ果て、なお巨大である。塔の頂は、天の紺青の神秘を背景にソーマの半月刀が淡く輝く高みよりさらに上にある。その頂を目指して空を切り、輪を描き、翼をうちふるって、サトヤカーマ・カーペーヤと道連れの烏たちは飛んだ。行者と最初に彼に呼びかけた一羽は、塔の壁が崩れ落ちてほかより低くなっているところにとまり、残りの二羽は暗く静まった夜に笑いを響かせるように声高く啼きながら飛び去った。烏が言った。「汝にはものを見る眼があるか?」
「眼ならございます」サトヤカーマ・カーペーヤは答えた。「こればかりのものですが」
「ならばここで起きることをしかと見よ、汝の持てるその眼でな」烏は言った。「さらに、これを王は夜ごと繰り返すのだと心得よ」
行者は塔の内部を、世界の深さの深みを覗きこんだが、底のほうはぎらぎらする輝きと渦巻く炎に照らされていたため、長いこと一心に目を凝らして、ようやく下のようすが見分けられるようになった。そこへ烏が言った。「〈地獄の門は三つ〉とウパニシャッドは云う」それでサトヤカーマ・カーペーヤにも見えてきた……なぜなら、彼は森での修行によってさまざまな力を身につけており、そのなかには尋常ならざる視力も含まれていたからである。底には裸体に剣と盾で武装した男がいた。男は三つの地獄の洞穴に囲まれて立ち、洞穴の口からは炎と悪臭と怒気があふれだすとともに、悪鬼どもが身悶えし、群がり出ようとするが、男はそれを押しかえすべく戦っていた。そこへ烏が言った。「あれが彼だ、彼が地獄の門より出ようとする者どもを封じるさまだ」そう言うなり烏ははばたき、夜の闇に笑うように啼きながら飛び去った。しかしサトヤカーマ・カーペーヤは脇目もふらず、戦っている男を見守りつづけた。悪鬼どもの鉤爪が幾度となく男を切り裂き、汗と血が滴った。敵が男に掴みかかり、彼の身体を引き裂こうとするたびに、掴まれたところの筋肉が震えた。必死に繰り出す太刀筋は木の根のようにねじ曲がった。男は奮戦し、苦悶し、血を流し、そして無言だった。しかし彼を越して塔を登ることのできる悪鬼はおらず、したがって人間の世界に悪鬼どもが放たれることもなかった。
そして茫洋たる水の上に太陽が昇った。足下の壁の破れ目から光が射して戦いの場を照らした。突然に静寂が訪れた。三つの地獄の口から吐き出された者たちはすべて元の穴に退きさがった。悪臭に代わって樹脂と白檀の薫香がたちのぼった。戦っていた男が立ちあがり、日光が黄金の衣のように彼の身体を包んだ。そしてサトヤカーマ・カーペーヤは男の身体の傷が神秘的な光を放って浮かびあがるのを見た。それは瑕瑾無き生まれをあらわす二と三十の印、そして転輪聖王の印――すなわち車輪、宝珠、ならびに世界の支配権をあらわす円盤であった。「これぞアティダンヴァン・サナカなり」サトヤカーマ・カーペーヤは言った。「大いなる力を持てるヴィデーハスの王なり」
サトヤカーマ・カーペーヤは飛び立ち、本来の姿で森の同輩たちのもとへ戻ると、見たものことごとくについて語った。三人は一年のあいだ沈黙し、瞑想した。ガウタマ・カウシータケーヤは悩ましげに首を振った。「これではブラフマンを知るかどうかについてはなにもわからない。まさに、われらの頭はもげ落ちるやもしれぬ」そして次のようにつづけた。「サトヤカーマ・カーペーヤよ、御身の思し召しやいかに」
「別のひとりが行って調べてみるのがよかろう」サトヤカーマ・カーペーヤは答えた。「ヴァカ・カークシャセーニよ、御身が行きたまえ」
***
ヴァカ・カークシャセーニは喜捨を施すクシャトリヤに身をやつした。馬を駆って昼時に都に着き、朝貢国の王侯が目どおりを待っている王の謁見の間に入った。そこには二十の七倍の統治者たちがいた。いずれも気位高く、賢明かつ権勢を誇る支配者で、顔立ちと肢体の美にめぐまれ、いともきらびやかに装っていた。彼らの身に纏う絹の衣、紅玉、銀と青玉、真珠と黄金のために、広間は無数の花が咲く庭園と見えた。そこへアティダンヴァン・サナカが姿を現し、玉座に着くと、王のヴェーダの威光と容貌の光輝のために、諸侯のもっとも優れた者でさえ、さながらとるに足らないランプの光、臭い脂を燃やし、灯心を切りもしない灯りが、昼の太陽を前におのれをひけらかしているかに見えた。ヴァカ・カークシャセーニは注意深く王を観察した。そして王の手の動きが遠く離れた国々を支え、平和を保つのを見た。王の眼のまなざしが彼方の野蛮な民族の蒙を啓くのを見、王の口より出る言葉が妬みと野望と諍いのあった場所に慈愛をもたらすのを見た。日暮れまで、行者は見るものに賛嘆し、王が去ったあとも賛嘆はやまなかった。しかし彼はたやすく動かされる人間ではなかった。外に出ると、宵闇のなか宮殿の庭園を歩み、見聞きしたものについて思いを巡らした。「これではブラフマンを知るかどうかについてはなにもわからない」彼は心で問いを形づくり四方に送りだした……。
夜に垂れこめる香気のむこう、ジャスミンの芯を持つ夜のむこう、木蓮の花の咲き誇る薄闇のむこうから、三匹の蛾が飛んできた。……真ん中の一匹が言った。「光を求める者は、ついて来よ」ヴァカ・カークシャセーニは蛾に姿を変えて宙に舞い上がると、三匹について飛んでいった。「ああ、湖がある。だが尊敬すべきサトヤカーマ・カーペーヤが語ったのとようすが違う」湖を囲む岸辺の平坦な輪郭が黒々と見え、宮殿の灯りが銀河にちりばめられた大きな星のようにまたたき、水のほの青いおもてに火影の反映がゆらめき、きらめいていた。「そしてこれが塔だな。しかし、賢い行者の話とは違うようだ」塔は美しい木々に覆われた平らな島に建てられ、みごとに葺かれた屋根を梢の上に覗かせ、ほっそりした支柱をそなえていた。真珠色になかば透きとおった最上階から漏れる光が柔らかく輝いていた。その光に向かって蛾は飛んでいった。二匹はかすかな羽音をたてながらせわしなくはばたいてあたりを飛び回り、はじめに口をきいた一匹は塔を覗きこむことのできる隙間に行者を導いた。「汝にはものを見る眼があるか?」蛾は言った。「眼ならございます、こればかりのものですが」行者は答えた。「ならば見よ、そしてアティダンヴァン・サナカは夜ごとこれを繰り返すのだと知れ」
そうしてヴァカ・カークシャセーニは塔を覗きこんだ。底には――それほど深くはなかった――三つの地獄の口があった。しかしそこから出てくるものはない。悪鬼どもが出ようとしてむなしくあがき、炎は衰えて力なく、地獄の神々はうち負かされて身悶えしていた。彼らをうち負かしたのは、その場を満たす光だということがわかり、光がどこから来るかもはっきりとわかった。地獄の口とのあいだの宙を漂う雲の上に、布とクサ草の座に腰を下ろして瞑想する裸の行者の姿があり、光は彼の額から発していた。「かくのごとく瞑想により彼らをうち負かすのだ」蛾は言った。「詮索好きの兄弟よ、ほかでもなく、かくのごとく彼は地獄の口を封印し、悪鬼どもが自由になるのを防ぐのだ」
「お聞かせください、仰せのことは真実の真実でございましょうか」ヴァカ・カークシャセーニは訊ねた。
「われはわれの知るところを汝に告げる」蛾はそう言って飛び去った。そのめまぐるしいはばたきは、夜の静寂にくぐもった笑いのような音をたてた。夜が明けるころ、さしこむ曙光が瞑想する賢者の身体を輝かせ、ヴァカ・カークシャセーニは二と三十の瑕瑾無き生まれの印と、世界の統治を一身に担う転輪聖王の印を見た。
行者は森に戻り、見聞きしたことを同輩たちに語った。彼らは三年のあいだ黙して瞑想した。サトヤカーマ・カーペーヤが重々しく首を振った。
「もしヴィデーハスの王に知識を求めたなら、われらの頭は落ちるやもしれぬ。いまの話ではブラフマンを知るかについてはなにもわからない」そして言い継いだ。「ヴァカ・カークシャセーニよ、御身の思し召しやいかに」
「もういちど調べてみるべきであろう」ヴァカ・カークシャセーニは答えた。「ガウタマ・カウシータケーヤよ、御身が行きたまえ」
朝になると人呼ぶところのパウトラーヤ・グラーヴァはホートリ祭官の姿で都へと行った。他のふたりが日暮れまでに見聞きしたほどのもの、またさらに多くを見聞きし、他のふたりと同様に賛嘆した。「だが、かの知識についてはなにもわからない」そこで夕暮れののち、庭園を歩みつつ思案を巡らし、思いを凝らして問いを形づくると、あらゆる方向へ放った。すると糸杉の森に歌う小夜啼鳥の声が聞こえた。それはこのように歌っていた。「迷える兄弟よ、来よ、されば汝知るを得ん」そこで行者は小夜啼鳥に姿を変え、もう一羽とともに、いつのまにか月光の庭園をすみずみまで満たす天上の楽音の導き呼ぶところへと飛んでいった。小さな暗い湖に出ると、ほの暗い水の面にオパールの
そしてパウトラーヤ・グラーヴァは中を覗き、宴が催されているのを知った。インドラにアグニ、ヴァーユ、プラジャーパティが青い蓮を象った玉座に腰を下ろしていた。ヴィデーハスの王は彼らに並ぶ王者として彼らとともに座っていた。一同の頭上から月に至るまでの高みは天の楽人ガンダルヴァたちの歌う声に満たされていた。「かくして彼は叡智を得る」小夜啼鳥が言った。「神々との会話から、ガンダルヴァの音楽から、それを得るのだ」
ガウタマ・カウシータケーヤは森の同輩たちのもとに知らせを持ち帰った。「御身ら、いかに思し召さるや」彼は訊ねた。
四日と三晩のあいだ行者たちは思いを巡らし、それから答えた。「われらの言い条には違いがあり、そのために意見がまとまらないでいる。みなで行って調べたうえで詮議するのがよかろう」
そうして夜になると三人は鷹に姿を変えた。宮殿へ、庭園の湖へ、島の塔へと飛んだ。翼に翼を並べて舞い降り、ひと晩じゅう見守りつづけた。そして朝に森へと帰った。
サトヤカーマ・カーペーヤは言った。「尊い行者らよ、みずからのあやまてること、われの言葉の正しかったことがおわかりか。御身らの眼で、ヴィデーハスの王が地獄の口で悪鬼どもを相手に戦い、その身体から血と汗が滴るのをご覧になっただろう」
ヴァカ・カークシャセーニが言った。「サトヤカーマ・カーペーヤよ、これはいかに。御身みずからわれの言い分が正しかったのを見たではないか。アティダンヴァン・サナカが布とクサ草のヨギの座に瞑想しつつ坐るのをご覧になったろう。そしてほかでもない瞑想によって地獄の口を封じていたのを」
ガウタマ・カウシータケーヤが言った。「尊い行者らよ、これはいかに。御身らはその眼で、われの言ったとおり、王が宴を催しインドラやプラジャーパティやそのほかの神々とともにいるのを見たではないか。神々が王に叡智を説き、天のガンダルヴァの群が歌いながら中空を天上の楽音で満たし、王を喜ばせるのを聞かれただろう……」
そこで三人ながら驚き、また忽然と悟るところあって面を見合わせた。そこで三人ながらいっせいに立ちあがった。「さあ! 疾く行かねば、われらの頭は落ちるやもしれぬ」
行者たちは薪を手にしてアティダンヴァン・サナカのもとに参上した。「師よ、われらにかのブラフマンをお教えください!」
「それならば」王は答えた。「われが汝らを諭すために羽を持つ者たちを遣わす前に来ればよかったものを。七年のあいだ薪運びとして宮殿にとどまり、そののちふたたびわれのもとに来よ」